私が、向日葵?あの、夏の太陽の光を受けて輝く、生命力の塊みたいな黄色い花、、?そんなはずはない。私はせいぜい日陰でひっそりと咲く、弱々しい小花。自分の心を傷つけて死んでしまう。
「葉奈は、勘違いしてる、、、、。だって、私が、、、」
「陽葵ちゃんは、自分のことを何にもわかってない!わたし達はみんな、陽葵ちゃんがいたから、、、立ち上がれたんだよ、、!」
「、、っどうして、そう思うの?」
「陽葵ちゃんはあの時のこと、覚えてる?」
なんのことを言っているのかは、聞かなくてもわかった。私と葉奈、それから百合と仲が良かった女の子、紫苑しおん。私達は、いつも4人で一緒にいた。
「紫苑が、、死んじゃった日。わたし達はみんな、俯いてた」
そう、あの日紫苑は病気で亡くなった。小さい頃からの先天的な病で、治る見込みはなかったらしい。紫苑はそんなこと、一言も言わずに旅立ってしまった。あの時のことを思い出して、胸がぎゅっと痛む。
紫苑が亡くなる一週間前。いつものように4人で一緒に帰っていたとき。紫苑は赤い空を見上げながら、スカートをくしゃっと握りしめていた。
声をかけようかな、何かで悩んでいるのかも。
でも。
何か、紫苑の心の深い部分をのぞいてしまう気がして、怖くなった。
ーーまた今度にしよう。
一瞬だけ、紫苑と目が合った気がした。気のせいだと思うけど。
その日だったらしい。医者に、余命が残り少ないと宣告されたのは。
「あのとき、残されたわたし達は泣いてばっかりで、前を向こうとしていなかったんだ。でもね、陽葵ちゃんが言ってくれたでしょ」
「私、、、?なにか、言ったっけ?」
葉奈は軽く頷いてから、微笑んだ。
「泣いてばっかりじゃダメなんだよ。そろそろ前を向かなきゃ、紫苑が心配するでしょ?って」
そういえば、言った気がする。あの時の私は、友達を亡くしたショックでとにかく前を向かなきゃと強がっていたんだ。それから私は、、
「天国で紫苑に会った時にさ、胸を張れる人生を歩もうよ、って言ってくれたんだ」
「そう、だったね」
「わたしと百合ちゃんは、陽葵のその言葉に救われたんだよ。そうだ、紫苑にまた会えた時に恥ずかしくないような生き方をしようって、前を向けた。まあ百合ちゃんはまだ、完全に前を向いてるわけじゃないいんだろうけどね」
「はは、そうだね」
葉奈は、私の手をぎゅっと握った。再び温もりに触れる。
「とにかくね!わたしたちはみんな、陽葵ちゃんに助けられたんだよ!だからさ、陽葵ちゃんが困ってたら、今度はわたしたちが助けたいの」
「葉奈、、、。ありがとう」
葉奈と話していると、心が温まるな。私は一人じゃないんだって思えるよ。
さっきは、葉奈のことをガーベラみたいだと言った。だけど、違ったみたい。
葉奈は、向日葵私が憧れる太陽だ。
みんな分け隔てなく光を届けてくれる、照らしてくれる存在。
「葉奈、、私、頑張ってみるよ」
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そうだ。私は大丈夫。
だって、葉奈がそう言ってくれた。まだまだ自分のことを好きになるのは難しいけど、葉奈が信じてくれた私なら、きっと大丈夫。
お風呂から上がってスマホを見ると、通知が来ていた。百合からだ。
〈陽葵、さっきはごめんなさい。陽葵の優しさに甘えすぎちゃったなって反省してる〉
〈私もそろそろ、前を向かなきゃだよね〉
百合、、、。そうだった、百合は本来、心優しくて気遣いができるあったかい性格。
紫苑が死んじゃってからは、時々情緒不安定みたいになることもあったけど、やっぱり大好きな友達だ。
まだモヤモヤはなくならないけど、少しずつ百合も前を向けてきている。
〈私は、まだ完全に消化し切れたわけじゃないかな。でも、一緒に前を向いて行こうね〉
そう送ってから、そっとスマホを閉じた。
葉奈たちにはえらそうに、「紫苑に天国で胸を張れるように」なんて言ったけど、私にはそれはできない。あのとき苦しんでいた紫苑を救えなかった私には。
きっと私は、これからもこの後悔を背負って生きていく。だけどそれでも、この人生を生き抜く。
だって。
あのとき私が葉奈を救って、今度は葉奈が私を救ってくれた。
だから、今度はまた、私が誰かを救う番だ。あのとき、言えなかった言葉を。
今、理不尽に傷つけられている人たち。自分のことを嫌って、傷つけてしまっている人たち。
ちっぽけなことだからって、誰にも言えなくて苦しんでいるかもしれない。
こんなことで傷つくなんて、弱いと思っているかもしれない。
そんな人たちに届け。
「一人じゃないよ」