「もうやだ、明日の受験怖いよおぉ〜」
まただ。受験前だとか、そういう不安なイベントの前になると、百合は必ず私に泣きついてくる。
あの時から。
でもね、私だって。
「私だって、受験生なんだよおおおぉぉぉおぉ!」
今日も私は、お風呂で百合への恨みを吐き出す。恨みっていうか、苛立ちっていうか。
大体なんで私だけがメンタルケアしなきゃいけないの?もう、自分を傷つけてばっかりの私じゃない。
私は一人じゃない。弱くない。
ガーベラの香りの入浴剤の心地よさに身を委ねて、気づけば私は少し前のことを思い出していた。
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「もうやだ、なんで私ばっかり、、、?」
学校の屋上は、地上よりも標高が高いからか、風が強い。もうすっかり色づいた紅葉が、秋晴れの空を待っている。
私が零した涙は、屋上の手すりに滑り落ちた。
「陽葵ひまりちゃん、どうしたのー?」
「葉奈はな、、?なんで、ここに、、、、?」
紅葉を髪にくっつけた女の子がやってきた。彼女は葉奈。いつもマイペースで楽しい子だ。
「んー?いつもニコニコしてる陽葵ちゃんが、珍しく暗い顔してたからー?」
「葉奈だって、いつもニコニコしてるじゃん、、、」
「あははっ、まあね〜!わたしは笑顔の代名詞だから!」
「そこは、笑顔はわたしの代名詞、のほうがいいんじゃない?」
言いながら、少し笑えてきた。ほんと、葉奈は人を笑顔にする天才だ。彼女がいるだけで、場の雰囲気が明るくなる。まるで、明るく元気な、橙色のガーベラみたい。
「あ、陽葵ちゃん笑った!」
「葉奈のせいでしょ〜」
葉奈が、丸みを帯びたマッシュショートを揺らしながらこちらに歩いてくる。
「、、、葉奈、悪いけどしばらくそこで、なんか話してて。心の整理がついたら、ちゃんと話すから」
「おけおけ、りょうかい!焦らなくて、いいからね?」
「ん、ありがと」
「てか聞いてよ陽葵ちゃん!わたしね〜」
葉奈はいつも、楽しいというかあほな会話をして私達を楽しませてくれる。
だけど、こんな彼女が県内上位校を受験するなんてなんだか納得いかない。
「葉奈、、あの、さ」
「ん、どした?」
「私、、もう、辛い」
私は今までずっと感じてたモヤモヤを、葉奈に吐き出した。どうして私ばっかりがそんな役回りを押し付けられなきゃいけないの?ずっと、ずっと心を支配していた思い。
「まあ、言葉にしてみたら意外と大したことじゃないんだけどね。こんなことで泣くなんて、ダメだなあ、私、、」
はは、、と渇いた笑いがもれる。葉奈を見遣ると、唇をギュッと噛み締めていた。
「葉、奈、、、?」
「陽葵ちゃん」
気づけば私は、温もりに包まれていた。葉奈に、抱きしめられているのか。
「陽葵ちゃんの、ばか、、、!」
「葉奈、、、、、どうして、葉奈が、泣いてるの」
自分のことでもないのに涙を流せるなんて、葉奈は優しいね。
葉奈は少し気持ちが落ち着いたのか、理由を話してくれた。
「実はね、わたしも今の陽葵ちゃんと同じような状況になったことがあったんだ」
「え、、葉奈も?」
信じられない。いつも自由に飛び回っている彼女が、、?
「葉奈はさ、そんなときどうしてたの?」
少し考えるかと思ったのに、葉奈は即答してくれた。
「自分を、守った」
「ぇ?」
「自分の心を、守ったよ。ヒトは、心を守らないと、やがて壊れちゃう生き物だからね。それにさ、自分を守れない人に他人人を守るなんて、できないでしょ?」
葉奈のその言葉は、私の心にストンとはまった。
「葉奈はさ、ガーベラみたいだよね。明るく元気で、そこにいるだけで周りを照らしてくれる」
「えへへ〜嬉しいこと言ってくれるね陽葵ちゃん!」
でもね、と彼女は続ける。
「わたしがガーベラなら、陽葵ちゃんは向日葵だよ」
「へ、、、?」
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